株の銘柄選びに使われる重要指標として、2000年代はPER(株価収益率)やPER(株価純資産倍率)が重宝されてきました。どちらも企業の収益や資本力に対して株価が割安かどうかを調べる指標として定番となっていますが、リーマンショックを境に、日本株市場において外国人投資家が大きなウエートを占めてきたため「定説」は通用しなくなっているようです。そこで、令和時代における銘柄選びの新指標として注目されているのがROE(自己資本利益率)とのことです。
PERとPBRが高い株銘柄は本当におすすめできないのか
私がリクルート株を購入した時、義兄からは「おすすめできない」と言われました。その理由は「PERとPBRが高いから」だそうです。
株の銘柄探しでは定番となっているPER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)。株を始めて間もない私は、日経新聞に取り上げられたりや話題の商品を出したりしている企業を中心に買ってみましたが、PERやPBRはほとんど気にしたことがありませんでした。
2019年8月、私はリクルート株は内定辞退率AI問題や持ち合い株の一部解消によって株価が急落して損切りした身なのですが、原因はPERやPBRが高いからではありません。
PERやPBRが高くても業績好調で買われる銘柄だって多いはず。義兄がなぜPERやPBRにこだわりを見せるのか、どうも腑に落ちないため詳しく調べてみることにしました。
なぜPERとPBRが投資指標で重視されるのか
そもそも、現在の日本株式市場では、なぜPERとPBRが中心的に重視されているのでしょうか。私を含めて知らない方もいるのではないでしょうか。
PERとPBRの計算式
まず、あらためてPERとPBRの計算方法についておさらいしてみたいと思います。PERは現在の株価に対して、1株当たり純利益(EPS)で割った数字。PBRは、株価を1株当たり純資産で割った数字です。
PER=株価収益率。株価を1株当たり純利益(EPS)で割った数字
PBR=株価純資産倍率。株価を1株当たり純資産で割った数字
日本の高度成長でPER、PBR台頭
PERやPBRが台頭してきたのは、日本の高度成長時代までさかのぼります。1950年代までは配当利回りが主役的な指標となっていました。株式投資は債権投資に比べてリスクが高いため、債権利回りより配当利回りの方が高いのが当たり前と考えられた結果でした。
この考えを一変させたのが、1960年代の高度成長期。これまでの常識であった「配当利回り>債権利回り」説が逆転して、債権の方が配当より利回りが高くなってしまったのです。
この中で高い利益成長を遂げる企業が出始めたことで、その利益成長、収益力を考慮した指標、つまりPERが海外から持ち込まれ、現在までの投資指標の主役へと躍り出ることになりました。
PER、PBRの正しい使い方
一般的に、PERとPBRは値が低ければ割安とみなされる傾向があります。しかし、PERやPBRが低いからといって、それだけで安易に手を出したら痛い目を見そうな気がする。では、PERとPBRはどのように活用すればよいのでしょうか。
PERは内需株の同一業種内での比較に用いる
PERを参考するのは、相場が横ばいになった落ち着いた環境で、同一業種の内需株の比較に使うのがよいとされているようです。同一業種というのはコンビニや百貨店といった具合に、同じカテゴリーに属する企業同士のことを指します。
・内需関連株
・同一カテゴリーの企業比較
PERは同一カテゴリーの企業比較に用いられるというのはなんとなくわかるのですが、なぜ内需関連株や横ばい環境に限定する必要があるのでしょうか。
その理由は、株式相場が乱高下する環境下では、外需株は「収益構造」の違いによって比較が難しくなるからだという。
例えば、2019年の相場を占う上で最重要視されている米中貿易摩擦下では、株価が乱高下する中でも、企業の中には売り上げの多くを米国依存しているところもあれば、欧州重視の企業もある。その2つの企業を利益から算出するPERで比較することは難しいのです。
化学や機械、半導体、電子部品のようないわゆる「景気敏感株」に投資する際にPERを参考にする時は注意する必要がある。
景気敏感株の株価は景気の波に先行する傾向にある。景気敏感株がピークを過ぎて下落にある時、実際の景気は好景気で上り調子であるため、利益は増えている。株価(分子)は下がっているのに利益(分母)が大きくなる、つまり見かけはPERが低い状態にあると勘違いしてしまうのだ。このタイミングで株を買うと、株価はどんどん下がっていく可能性が高くなる。
PBRは相場全体の下値判断に使う
企業の資産価値を示すPBRは、1倍で株価と純資産が等しいことを意味しています。1倍を切るとその企業の株価は割安で、1倍以上だと逆に割高であるというのが一般的な認識だと思います。
これに加えて、PBRは相場全体の下値を判断するのにも使えるらしいのです。過去のPBR推移によると、リーマンショックや東日本大震災のような相場急落時は、日経平均のPBRは0.8倍付近で下げ止まったそうです。
最近、日経平均のPBRが1倍を切ったのは2018年12月26日の0.99倍(投資の森調べ)で、この記事を書いている2019年9月9日は1.05倍となっています。
日経平均のPBRは1.0倍を割り込むようになると、相場の底入れが近いということになるようです。
ROE(自己資本利益率)は外国人投資家が使う指標
PBRを個別企業の投資指標として使うには、近年はそのままの値ではなく、ROE(自己資本利益率)を使って表すと良いという話があります。
ROEはざっくり言えば、株主資本を使ってどれだけ効率よく収益を上げているのかを表す値となっています。計算方法は簡単で、PBRをPERで割った値です。
PBR(株価純資産倍率)/PER(株価収益率)
つまり、企業の純資産価値が低いと利益率も低くなるということになります。利益率が低いとキャピタルゲインや利益の伸びも悪くなる。結果として、投資するメリットが無いと判断されるというわけです。
PERやPBRに代わって、なぜROEが投資指標として近年台頭したのか。その理由は、外国人投資家にあります。
PERとPBRからROEへの変わり目となった契機はリーマンショックでした。この頃から、日本の株式市場において存在感が増したのが外国人投資家です。現在、6〜7割まで増えた外国人投資家が使う投資指標はPERやPBRではなくROEなので、自然と主導権を握るにはROEということになります。
ROEにおける銘柄の選び方
ROEにおける株銘柄はどう選んだらよいのでしょうか。日経マネー2019年8月号に掲載されていた「ROEを使った銘柄選び術」によると、ROEは「改善銘柄」を買うのがよいという。
ROEの「改善銘柄」とは、端的にいうとROE値が前期から増えていること、そして売上高が伸びている銘柄が多く買われる傾向にあるという。
ROEの数値が改善された、つまり株主資本を利用した収益力が改善された裏にはコストダウンが寄与している場合もあるということです。単なるコストダウンによってROEが改善されるよりも、売上高が伸びている企業を外国人投資家は買いたがるようです。銘柄選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。